LUMIX S9写真展
山谷佑介「Yakety Yak」
菅野恒平「The personal is political」

概要
“Yakety Yak” / 山谷佑介
子供の頃、一番最初の夢は野球選手だったと思う。
そんなことはとうに忘れていたけど、自分の子供がサッカーを始めたことで、ふと思い出した。
あの頃の友達のことや、コーチのこと。練習をしていた小学校の大銀杏や、木造の校舎のこと。いつも迎えに来てくれていた祖父、そして軽トラの荷台から見る田んぼや山の景色。ちなみにお父さんとはキャッチボールをした記憶はなくて、うちはお母さんが野球好きで、いつも欠かさず試合を見に来てくれていた。
あれから30年。Jリーグも30年。そういえば、サンフレッチェ広島の帽子を被って野球をしていたことを、今また思い出した。サッカーの試合なんて見たことなかったのに。
2024年、横須賀。長男はNintendo Switchのサッカーゲームでパリ・サンジェルマンを使っているし、次男は朝4時に起きて、ABEMAでEURO 2024を見ている。すごい時代だなと思う。
最近、息子の所属チームのみんなに、私が写真家だということが知れ渡ってきて、専属カメラマンみたいになってきた。なんでも撮れるわけじゃないんだけど、、と思っていたけど、S9だったらやれる気がしてきた。
“The personal is political” / 菅野恒平
今回は自らのコミュニティに焦点を当て、そこにある生活とその周囲に広がる世界を捉えたいと思いました。
何気ない日常の風景というあまり面白味の無い被写体に強く意味と勇気を与えてくれるのは、「個人的な事は政治的な事」という60年代以降のアメリカフェミニズムの中で使われたスローガンでした。料理をしたり、窓から外を眺めたり、友人と話したり、そういう生活の中にも巧妙に潜んでいる権力構造に気づくことが、個人的な事は政治的な事である、という言葉の意味であると思いました。
また私のもうひとつの問題意識は、2000年代以降日本でよく耳にするようになった「自己責任論」という考え方で、いわゆる新自由主義的感覚とセットになって浸透し、多くの人々の痛みを個人の選択によるものとして矮小化してきました。
自分だけの固有の問題と諦めていた事が、実は属性への偏見や差別など社会構造そのものと深く関わっている場合があると学ばなければいけないと思います。
そんな時に、「個人的な事は政治的は事」という言葉は今でもなお、一市民として社会の中で生活していくための道標になると思います。
開催期間
2024年7月31日(水)~8月25日(日)※月曜定休、8/12(月)~8/16(金)夏季休業
営業時間:11:00~19:00
会場
LUMIX BASE TOKYO
入場料
無料
作家プロフィール
山谷佑介 YAMATANI Yusuke
1985年新潟県生まれ。
2013年に初写真集『Tsugi no yoru e』を自費刊行。
近年の展示に「第14回恵比寿映像祭」(東京都写真美術館、2022年)、個展「KAIKOO」 (Yuka Tsuruno Gallery、2021年)、「VOCA展 2021」(上野の森美術館、2021 年)など。
グループ展「LUMIX Meets BEYOND 2020 #5」(アムステルダム、パリ、東京、2017年)参加。
写真集・モノグラフに『ground』(lemon books、2014年)、『RAMA LAMA DING DONG』(私家版、2015年)、『Into the Light』(T&M Projects、 2017年)、 『Doors』(ギャラリー山谷、2020年)など。
最新作は温泉を題材にした『ONSEN I』(flotsam books、2023年)。
菅野 恒平|かんの こうへい|Kohey Kanno
東京生まれ。
2004年、日本大学芸術学部写真学科を卒業。
同年、FOILアワード入選、資生堂宣伝部スタジオ入社。
2008年にニューヨークへ移住しデヴィッド・ベンジャミン・シェリーのアシスタントを経て、2016年に帰国。
同年JAPAN PHOTO AWARDにてブルーノ・ケルシュ賞、シャーロット・コットン賞を受賞。
過去の作品に「ハネムーン」(Session Press)、岡部桃との共著「Unseen / Tsunami」(Dashwoodbooks)、近作に「Rolling eyes」などがある。
2017年はIMAプロジェクト主催「LUMIX Meets BEYOND 2020 #5」に選出。アムステルダム、東京、パリにて巡回展を行う。
現在は、東京をベースに活動。日常的なイメージの連続から、社会の構造やコミュニティの成り立ちを解きほぐす表現を模索中。
「個人的なことは政治的なこと」は、大きなテーマ。