ライカとLUMIXで表現するモノクロームの世界

ライカモノクロームフォトコンテスト

©Takehiko Nakafuji

ライカとLUMIXで表現するモノクロームの世界 ライカモノクロームフォトコンテスト 2024/9/20[金]~12/1[日]

審査結果発表

「ライカモノクロームフォトコンテスト」へ多数のご応募をいただき、誠にありがとうございました。
厳正なる審査の結果、入賞作品が決定いたしましたのでご紹介いたします。

大賞

「GINZA Street」

橘 翔さん

GINZA Street
  • Leica M10 Monochrom, Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Aspherical

講評:中藤毅彦(写真家)

真っ正面から堂々と人物と対峙してシャッターを押した迫力あるスナップショットだ。
銀座でインバウンドの旅行者を被写体に撮影すると言う行為には、今の時代を象徴的に捉えるドキュメンタリーとしての意味合いもあるだろう。
写真の歴史を顧みると、ライカはスナップに適したハンドカメラとして多くのストリートスナップの巨匠に愛用されて来た特別なカメラである。
この作品は、ウィリアム・クラインやエド・ファン・デル・エルスケン、近年ではブルース・ギルデンと言った被写体に肉薄して時代を捉えたスナップの名手達の作品の系譜を確かに引き継いでいる。
ライカモノクロームフォトコンテストの大賞に相応しい1枚と言えるだろう。
ライカ賞

「渋谷、雪の日に」

Jin Uchiyamaさん

渋谷、雪の日に
  • Leica M Monochrom, LEICA SUMMILUX M f1.4/75mm (2nd)

講評:ライカカメラジャパン株式会社

この作品を一目観て、審査員長の中藤毅彦さんが撮られた作品かと思ったのは私だけではないと思います。そんな中藤さんの影響を少なからず受けた様な素晴らしい作品に感じました。
雪の降る寒い日に食堂内の暖かい厨房の中でせわしなく働いている人たちと、傘をさして外の路地を寒そうに歩く人とのコントラストが作品を引き立て、それぞれの人々のドラマを創造させます。渋谷の街角を、ライカMモノクロームで文字通り、色のない世界をクールに捉えたカッコいい作品ですね。
いかにもライカのM型カメラが得意そうな「ザ・ライカスナップ」という感じがします。まさにLeica 賞にふさわしい素晴らしい作品だと思います。おめでとうございます。

講評:中藤毅彦(写真家)

シンプルなタイトルが良い。ここにさりげなく地名が入っていなかったら、この叙情的なスナップの撮影地が渋谷である事に気がつく者は少ないだろう。
日々、巨大な再開発の進む近未来都市渋谷だが、一歩裏通りに足を踏み入れてみれば、未だこうした哀愁漂う昭和的な一角も残っているのだ。
降り始めの横殴りの雪の描写が、何でもない一角を一瞬にしてドラマチックに演出する効果を上げた。
凍える様な冷たい外気と調理場の熱気との落差、雑然とした店頭、排気口からムワッと漂う焼き鳥を焼く煙の香りが画面から漂って来る。
この路地の気配を見事に捉えた優れたスナップだ。
変貌を続ける大都市の中で、次第に失われつつ有る人の匂いを感じさせる光景に丁寧に目を向けている事に好感を覚える。
LUMIX賞

「君の瞳は1000カラット」

中野 厚史さん

君の瞳は1000カラット
  • LUMIX DC-G9M2, LUMIX G MACRO 30mm/F2.8 ASPH./MEGA O.I.S.

講評:パナソニックエンターテインメント&コミュニケーション株式会社

まずはLUMIX賞受賞おめでとうございます。
この作品を最初に拝見した時、作者さんご自身のコメント通り「アングルのヴァイオリン」と並ぶマン・レイの代表作の一つである「ガラスの涙」を思い浮かべました。
現代のテクノロジーを活用してかつての偉大な作品を意識したオマージュ的作品にするのも素敵だなと思いました。
モデルさんの印象的な瞳と共に涙を模したガラスや玉ボケ等、「円形」が共通して配置されていること、ピント面からの緩やかなボケ感、ハイライト部からシャドー部への美しいグラデーション等、「ライカモノクローム」の美しさが際立つ素晴らしい作品だと思います。
受賞おめでとうございました!是非これからも素晴らしい作品を撮ってください。

講評:中藤毅彦(写真家)

多くの応募作の中で、ひときわ瑞々しい感性が光っていた1枚である。
極端なまでのアップで顔面を大胆に切り取った構図が絶妙で、タイトル通りに印象的なモデルの瞳が強調された。
レンズ描写の特性を上手く活かしたのも見事だ。
ご本人も書かれているが、絞りの形がうっすらと残る玉ボケの描写が、瞳の周りにセッテイングしたスワロフスキーと不思議な対比になった。
これには、写真の神が降りて来たかの様なマジックを感じる。
キャプションを拝見すると、マン・レイの作品をはじめ、写真作品のみならず、映画や音楽など様々な芸術にインスパイアされて撮影された様である。
そうした表現から受けた良質な刺激を自らの作品の糧として見事に昇華させたと言えるだろう。
佳作

「事象のからくり」

ChamaZoさん

事象のからくり
  • Leica Q2 | SUMMILUX f1.7/28mm ASPH.

講評:中藤毅彦(写真家)

大小さまざまな大きさと形状の歯車が折り重なる様をスパッと切り取っている。見る者にシャープで力強い印象を感じさせる作品だ。
何かのオブジェ的な作品を写したのか、自らセッティングしたものかは分からない。
いずれにしろ、ここしかない部分を大胆に切り取った構図感覚の確かさが効いている。尖った感性は審査の場でも異彩を放っていた。
どこか1930年代に活躍したジュルメーヌ・クルルやラスロ・モホリ・ナジと言った新即物主義や構成主義の作家の作品を彷彿とさせる。
考えてみればライカと言う革新的な小型カメラもまた、この時期に発明された機械文明の申し子である。
びっしりと歯車が並んだ光景は、どこかカメラ内部の複雑なからくりとも通じる世界がある。

「捕食」

中木さん

捕食
  • LUMIX DC-S9, LUMIX S 26mm F8

講評:中藤毅彦(写真家)

モノクローム写真は言うまでもなく、色の情報をシャットアウトして白と黒の階調で表現する写真である。
白と黒とは言い換えれば光と影の事である。つまり、モノクロームとは究極的に言えば光と影で世界を描く表現と言えるだろう。
そうした意味で、状況説明は一切削ぎ落とした奇妙な影絵の様なこの作品は、モノクロ表現の本質を体現している1枚だと感じる。
親子の影が叙情的な幻想の物語へと見る者を誘いつつ、直線が大胆に交差する画面構成はロシアンアバンギャルド的な力強さも発している。
「補食」というタイトルもキャプションも不可思議で、気がつくと何やら作者が仕掛けた術中にはまってしまった気がする。

「朽葉の囁き」

倉嶌 洋輔さん

朽葉の囁き
  • Leica D-LUX8 | DC VARIO-SUMMILUX f1.7-2.8/10.9-34mm ASPH.

講評:中藤毅彦(写真家)

意識して目を凝らしていなければ見過ごしてしまうだろう何でも無い1枚の枯れ葉。
しかし、ここに写された枯れ葉の存在感は圧巻である。
作者はふと、枯れ葉に心惹かれ、凝視し、思索を深め、心を込めてシャッターを切った。その想いが写真に表れている。
まるでここに枯れ葉が存在している様な立体感で、葉脈1本1本のディテールまでが迫って来る。
光と影とマチエールを活かした、モノクロームならではの美しさが凝縮した1枚と言える。
時に「写真とは何か?」と考えたりする事があるが、単なる記録ではないのが写真の奥深さだ。
写真とは時間を静止し、被写体の姿や瞬間の光を永遠に留めておく装置であり、また作者の心の鏡でもあるのだろう。

「仔虎」

⻑嶋 健さん

仔虎
  • LUMIX DC-G9M2, LEICA DG VARIO-ELMARIT 50-200mm/F2.8-4.0 ASPH./POWER O.I.S.

講評:中藤毅彦(写真家)

この作品には、理屈っぽい評論や意味付けは不要であろう。
写真を見れば一目瞭然であるが、母トラに甘えている所と思われるホワイトタイガーの子供の表情を、実に上手く捉えており、どこからどう見ても可愛らしい。
見る者をほっこりと笑顔にさせてくれる1枚である。
虎はネコ科の一種で巨大な猛獣ではあるが、こうして見ると大きさは違えども仔ネコそのものである。
ネコはアマチュア写真家にも非常に人気のある被写体のひとつで、今回の応募作の中にもネコをモチーフにした作品が数多く見受けられた。
ネコ好きの自分としても大いに惹かれる作品もあったが、ここはネコ族を代表して仔虎を選ぶ事にさせて貰った。

「A shape of the future」

Sanzen-Ichi さん

A shape of the future
  • Leica M11, LEICA SUMMICRON M f2.0/35mm ASPH.

講評:中藤毅彦(写真家)

百年に一度と言われる大規模な再開発のまっただ中の渋谷駅の遠景である。
工事用壁面の前を歩く人物がこの場のスケール感を表す良い効果となっている。
ついこの間まで、ここに渋谷駅の駅舎とデパートの大きな建築があったのだが、既に跡形も無い。
まるで古代ローマ時代の遺跡の様相で、正に栄枯盛衰である。
今の渋谷では、ほんの1週間、見なかったうちに街の風景が全く一変していたという様な事態がよくある。
決して美しい光景とは言えないが、この渋谷は正に現在進行形の今しか撮れない一瞬の光景である。
この時代の記録・記憶として撮影していく事には大きな意義があると感じる。

「雨は続き 夜は始まる」

冨山 寅二郎さん

雨は続き 夜は始まる
  • LUMIX DC-G9M2, LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm/F2.8-4.0 ASPH./POWER O.I.S.

講評:中藤毅彦(写真家)

東京の神田駅辺りの飲屋街だろうか?
この辺りには明治時代に建造された趣ある煉瓦造りの鉄道の高架があちこちに残され、雑然とした街並と溶け込んで独特の風情がある。
僕自身も折に触れてスナップを撮りに訪れる東京で好きな場所のひとつである。
こうした懐かしい場所を撮る時、雨の夜は良いシチュエーションとなる。
路面の水たまりに反射する光や傘をさした人々のシルエットも、何とも絵になるものだ。
時代の流れは仕方が無いものだが、再開発で多くの街が変わってしまった。
タワマンやハイテクビルが立ち並ぶ無機的な都市に変貌を遂げていく中で、出来るだけ長くこのままの姿で残って欲しい東京の原風景である。

たくさんのご応募誠にありがとうございました。

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